略歴
1917 中国・広東で生まれる1940 マサチューセッツ工科大学卒業1946 ハーバード大学デザイン学部大学院修了1948-55 Webb&Knappのディレクターを勤める1955 Pei Cobb Freed&Partners(旧I.M.Pei&Partners)設立2019 逝去(享年102歳)
主な作品
1967 国立大気研究センター(コロラド州 ボルダー)1968 エバーソン美術館(ニューヨーク州 シラキュース)1973 コーネル大学ハーバート・F・ジョンソン美術館(ニューヨーク州 イサカ)1976 マサチューセッツ工科大学ラルフランドー化学工学ビルディング
(マサチューセッツ州 ケンブリッジ)1977 ダラス市庁舎(テキサス州 ダラス)1978 ナショナル・ギャラリー東館(ワシントン)1979 ジョン・F・ケネディ図書館(マサチューセッツ州 ボストン)1981 ボストン美術館西館(マサチューセッツ州 ボストン)1989 中国銀行(香港)1989 モートン・H・メイヤーソン・シンフォニーセンター(テキサス州 ダラス)1990 神慈秀明会ベルタワー「ジョイ・オブ・エンジェルス」(滋賀 信楽)1993 フォー・シーズンズ・ホテル(ニューヨーク)1993 ルーブル美術館ピラミッド(パリ)1995 ロックン・ロール・ホール・オブ・フェーム・アンド・ミュージアム
(オハイオ州 クリーブランド)1997 MIHO MUSEUM(滋賀 信楽)2001 中国銀行本店(北京)2003 ドイツ歴史博物館(ベルリン)2006 グラン・ドュック・ジャン近代美術館(ルクセンブルグ キルヒベルグ)2006 蘇州博物館(中国 蘇州)2008 イスラム美術博物館(カタール ドーハ)2012 MIHO美学院中等教育学校 チャペル(滋賀 信楽)
主な受賞
1976 トーマス・ジェファーソン記念 建築部門賞1979 アメリカ建築家協会(AIA) ゴールドメダル1983 ブリツカー賞1989 高松宮殿下記念世界文化賞2003 スミソニアン協会 ナショナルデザイン賞2006 アーウィン・ウィッカート財団 東洋西洋文化賞
小山美秀子師とI.M.ペイ氏との出会いのきっかけとなったのは、神慈秀明会本部・滋賀の神苑へカリヨン(洋鐘)建設の計画がなされたことからでした。小山美秀子師と小山弘子初代理事長は、知人の紹介を受け、昭和62(1987)年9月21日にニューヨークにあるペイ氏の事務所を訪れました。この時には、具体的に話は進展しませんでしたが、同年11月9日にペイ氏が滋賀の神苑へ来苑され、そこで、多くのものに深く感銘を受け、設計への意欲を示され、話が具体化されていきました。小山美秀子師は、ペイ氏をお迎えするにあたって、随所に美術品を飾られましたが、その中の一つに、MIHO美学院の校章のもとになった、「飛天像」がありました。
学生寮について
学生寮は、北館の女子寮と南館の男子寮があり、お互いの建物で八の字を描いています。八の字は、古来より末広がりを意味し、おめでたい数字として扱われてきました。部屋は2段ベッドが2つの4人部屋になり、クローゼットや個人机などが備え付けられています。部屋の構成は、上級生が新入生をお世話できるよう縦割(たてわり)になっています。
寮での生活も学びの場です。親元から離れ、寮での集団生活は、最初は、つらく、厳しいものであるかもしれません。しかし、洗たく、アイロン掛け、お掃除などを身につけて、その厳しい生活を乗り越えた時、ふと振り返れば、今までとは違う自分に気付くのではないでしょうか。若いうちに生活力を身に付けることで、将来、どのような環境に置かれても、たくましく生きていけるのではないでしょうか。
寮の中には、居室の他、それぞれの階の両サイドに多目的室があります。ここで、お茶を飲んだり、おしゃべりをしたり、くつろいだ時間を過ごすことができます。また、防音室では、得意な楽器を奏でることもできます。
寮は、もう一つの学校ともいえます。生徒たちはここで、洗濯、清掃、身じたくなどを行い、みんなで協力しながら生活していきます。部屋には、一人ひとりに学習机があり、独立して勉強できるようになっています。学友とともに生活をすることによって、人とのつながりや思いやりを学ぶことは、生徒にとって、かけがえのない宝ものになると思います。
本校では、掃除の仕方に様々な工夫が凝らされています。雑巾やバケツなどの清掃道具は、上用、下用など、掃除する場所、用途に応じて分けられています。このことで、物事には順序があることを自然と学んでいきます。また、一番大切なことは、心を込めて清掃することで、自分自身を見つめ直し、心も共に美しくしていくことだと思います。
共用施設について
フォーコートには、受付や図書館があり、コモンズには、食堂と体育館があります。パビリオンは、校内唯一の木造建築で、茶室としても利用可能な、和室棟があります。また、グランドは、ナイター照明が取り付けられています。
来校された方が、最初にお立ち寄り頂き、手続きをする所です。
本や雑誌、新聞などの他、DVDなどを鑑賞するコーナーや学習スペースが設けられています。照明は、天井を照らす間接照明が用いられ、目に優しくやわらかな光で部屋全体を明るくしています。また、学習机には、個別に卓上照明が取り付けられています。
生徒たちは、朝、昼、夕の食事を包丁の扱い方、だしの取り方など、料理をする上での、基本的なことを学びながら調理します。生徒自身が育てた自然農法の食材が使われることもあり、命を頂く感謝の心を育みます。
屋内球技や跳び箱やマット体操などの他、畳を敷きつめて、柔道場としても使用されます。また、講堂としての活用もあり、各種の行事や文化祭のステージ発表も行われます。
敷地内の山の谷間に、校内で唯一の木造建築が佇んでいます。素材が吟味され、お床があり、茶の湯を学ぶ場としても使用されます。日本の伝統文化を学ぶことで、立ち振る舞いなどの所作が磨かれ、行動の美が身についていくことでしょう。
教育施設について
校舎内は、オフホワイトの柔らかい清楚な色調でまとめられています。窓は、床から天井まで、壁面いっぱいにガラスが貼られているため、外からの光で教室や廊下が明るく、解放感にあふれています。普通教室や特別教室は、1クラス20人の教室になっています。
各教室の壁には、アメリカのペンタグラム社がデザインした、サインプレートが取り付けられています。このプレートは、壁から突き出すような立体構造になっており、裏側にはそれぞれ、赤、青、黄、緑の塗装が施され、白い壁に色が反射して、あたかも後ろにライトが仕掛けられているような演出が施されています。
生徒が使用する机は、ヨーロッパの職人が、丹精込めて作ったもので、鉛筆が前に転がっても落ちないように、溝が掘られています。椅子は建築家としてもデザイナーとしても有名なアルネ・ヤコブセンのアリンコチェアが使われています。黒板の奥には、テレビが内蔵され、教科に関連した映像やパソコン画面を映し出せ、多角的な授業が行われます。
保健室の養護の先生が、寮や保護者、校医の先生と連携をとりあって、最善の処置法を行っていきます。部屋には、ベットや医療器具が設備されています。
生徒会長をはじめ、生徒会メンバーがここに集まり、さまざまな案件が話し合われます。文化祭や体育祭などの大きな行事には、白熱した議論が交わされることでしょう。
広々として明るく、見晴台のように、外が見渡せるようになっています。部屋の前後の壁面には、ガラス戸がはめられ、天井は高く、部屋全体が白を基調としているため、開放感に満ち溢れています。
被服室は、壁がガラス貼りになっているため、廊下から授業のようすを見ることが出来ます。ここでは、ミシンを使っての洋裁や小物などを針で縫う作業が行われます。収納棚の外側は、ミラー仕上げになっているため、制作中の洋服を確かめることができます。
ゆとりを持たせた広々とした教室は、さまざまな用途で使われます。美術の時間では、絵を描いたり、テレビモニターで調べた作品を発表したりします。書道の時間では、姿勢を正し、机上で書くことや、大きな作品の時には、机を移動して、床の上で書くことも出来ます。
広々とした教室の床には厚い木材が貼られています。ここでは、木工や陶芸など、さまざまな作品が生み出されます。時には、専門家を招いての特別授業が行われます。
アートコートの廊下には、展示用の照明が取り付けられ、生徒の作品を展示するギャラリースペースになっています。また、外のテラスには、立体作品が置けるスペースが設けられています。
ピアノが2台あり、専門的にピアノのレッスンを行うことができます。ギターやお琴、電子オルガンなど、さまざまな楽器が用意されています。まず、楽器に触れることで興味を持ち、学習意欲が湧くように工夫が凝らされています。
コンピューターを介して、さまざまな情報が行き交う現代にあって、正しい情報知識を身に付けることは、自分を守る上でも大切なことと言えるでしょう。ここでは、パソコンの基本操作から、情報の取り扱い方など、受け取る側と発信する側の両方の立場で考えていきます。
調理実習室では、厨房で行う普段の食事作りとは別に、季節の食材を活かした調理実習が行われます。例えば、生徒が摘んできたよもぎで、よもぎもちを作ったり、おせち料理を作ったり、日本の四季を食材から学んでいきます。
ここは、第1実験室と第2実験室があります。第1実験室は、化学・生物室で、フラスコや顕微鏡などの器材が取り揃えてあります。第2実験室は、物理・地学室で、真空ポンプや電力計、岩石切断機などを使った実験が行われます。
1学年40名が同時に集まれ、ビデオ鑑賞や、道徳の授業などが、ここで行われます。床にはじゅうたんが敷かれ、長時間滞在しても、体に負担がかからないよう工夫がされています。
ここには、さまざまな音響設備があり、防音室では、収録も行えます。将来は、生徒の中から、シンガーソングライターが生まれるかもしれません。
名前の通り、多目的な用途で使用される教室です。1クラス20名が集まれるので、クラス会議や委員会活動、部活動など、活用法はさまざまです。
MIHO美学院は、信楽の山間に位置し、周囲は森に囲まれた自然豊かな学校です。建学の精神の一つである、自然順応、自然尊重に基づき、自然と建築の調和を目指したマスタープランが最大の特徴と言えます。 I.M.ペイ氏デザインによるチャペルが敷地中央に配置され、それを取り囲むように各施設の建物が建ち並び、チャペルの象徴性が高められています。また、チャペルと各施設の建物が調和するように、山の起伏に合わせた建物の配置角度や各階レベルの設定により、自然と建築の一体感が目指されました。チャペルの外装に使用された51枚のステンレスパネルや内装に使用された8160枚の吉野杉の小幅板は、全てが異なる曲線形状で制作され、全く歪みのない連続自由曲面は、完璧なまでの施工がなされています。
チャペルの独特な曲面に対して、各施設の建物は、直線的で余計な装飾的要素を一切持たないデザインで統一されています。屋上には、こけや草が植えられ、上空からの彩を添え、周囲との調和を図っています。外装は、ベージュ色の極小モザイクタイルと特殊化粧コンクリートの打ち放しで仕上げられ、清楚で穏やかなイメージでチャペルとの調和を保っています。内部と外部との空間の境を越えて、自然との繋がりを感じさせるように、大窓で統一され、明るく開放的な空間を演出しています。
校舎棟の内部は、白壁と木製床で仕上げられ、図書館棟、体育館棟は、木壁とライムストーンの石床で統一されています。また、各所に配置された普遍的かつ機能的にデザインされた家具や独創的なサイン計画が融合し、学校施設とは思えない独特な空間となっています。校舎棟に併設された和室棟は、キャンパス内唯一の木造建築で、現代的にアレンジされたデザイン空間は、恒久的かつ日本独特の伝統美を感じさせます。キャンパス内のアプローチは、桜の木が主体となり、建物の周りは、紅葉の高木などが配され、四季を通じて、さまざまな表情をキャンパスに与えてくれます。
MIHO美学院のキャンパスは、信楽町の西方、太神山(たなかみやま)のふもとに位置し、歴史ある「畑のしだれ桜」や、天満神社のある古い集落の端に佇んでいます。美学院の校舎は、本校のシンボルであるチャペルを中心として、自然の景観に溶けこむようにデザインされています。設計はI.M.ペイ(チャペル)とio Architects LLP(全体設計・教育施設・共用施設・学生寮)によるものです。
MIHOチャペル
アカデミックセンター ACADEMIC CENTER普通教室12室/職員室/総務室/被服室
アートコート ART COURT美術・書道室/工作室
ドメスティック・アート DOMESTIC ARTS音楽室/情報処理室/調理実習室
サイエンス&メディア SCIENCE AND MEDIA自然科学実験室/視聴覚室/多目的室
フォーコート FORECOURT図書館/受付
コモンズ COMMONS体育館/食堂
パビリオン PAVILION和室棟
レジデンスホール RESIDENCE HALLS学生寮/北館(女子) 居室31室 南館(男子) 居室32室
チャペルについて
チャペルは、敷地のほぼ中央に位置し、美学院のシンボルです。設計者のI.M.ペイ氏は、生前の小山美秀子師に思いをはせ、扇の形を丸めたシンプルなデザインに仕上げました。ペイ氏が初めて設計した建物もチャペルであり、集大成とも言えるこのプロジェクトで設計したのも、奇しくもチャペルでした。
MIHOチャペルは、正面上部の1点のみでつながる、とても特殊な構造をしているため、施工するにあたって、多くの困難がともないました。また、外壁に使われているステンレスパネルは、ビーズ・ブラスト仕上げと呼ばれる特殊加工を施しています。およそ18メートルのパネルを特殊加工できる技術は、日本にしかなく、千葉県の工場より新幹線の車輛を運ぶトラックにのせ、真夜中に少しずつ運ばれて来ました。正面と上部にはめ込まれているガラスは、ドイツ製の特殊ガラスが使用されています。内部は、加工された吉野杉の板が、1列160枚で51列の合計8,160枚が並べられています。壁が3次曲面を描いているため、一つとして同じ形はなく、木材加工の優れた日本だからこそ可能になった技術と言えます。
小山美秀子師は、ペイ氏と会われる時には、主に和服を着て出迎えられました。襟を正し、いつも身なりを整えられた、凛とした姿が、ペイ氏の脳裏に刻まれたことでしょう。ペイ氏は、生前の美秀子師の姿に思いをはせ、清楚で気品のある形を生み出しました。形のもとになったのは、日本で発展した扇の形が用いられています。この扇を一点で閉じた形をより美しく見せるために、ステンレスパネルに微妙なカーブが加えられ、背面が少し高くなっています。
チャペルでは、朝と夕方に生徒と教職員が集まり、感謝の祈りを捧げます。壇上のお額には、岡田茂吉師の書「真善美」が掲げられています。一人ひとりの言動が真善美に近づくように祈ります。その祈りは、きっと、世界平和へとつながることでしょう。